制服

 

学校で制服が必要かという議論で真っ先に出てくるのが
制服なら貧富の差がわからず、華美にならないからという
ものがある。布地の良さ、きちんとしたところでの洗濯、
古くならない前に新しいのを買うと言う理由で
ひと目で「いいとこの子」がわかるものである。
貧乏だとお下がりのまたお下がりという古い場合もある。

私が小学校の5年生のときの卒業式のことである。
卒業生ではないが、在校生として5年生全員卒業式には
出なくてはならない。そこで母は古い制服であるがきれいに
洗濯されたものを着してくれてその日は学校に来た。
すると先生に呼び出され、ある卒業生の制服が古くて
汚いのでおまえの制服と卒業式の間、交換していて
欲しいと言う。

僕のよりもっと立派な制服があるのではないこと言いたいのを
我慢して本当に古い洗濯もしてないような汚いのを
着せられて卒業式に並んでいた。これは僕のじゃない、
もっと貧しい卒業生の制服だと叫びたい気持ちであった。
またこれほどいやな卒業式になった先生を憎んでいた。

着せ替えられた卒業生は誰かは知らないままだが、
「いいとこの子の」羊毛を使ったひと目で良さがわかる
ものではなく、同じように貧乏であるが木綿の洗濯したての
私の制服が選ばれた理由が今ではわかる。

昔の先生たちはある意味で残酷であった。極端に言うと
「はーい、皆さんの中でお父さんにいないひとは手を上げて」
と平気で言える人たちであった。卒業生の中に汚い制服がいては
せっかくの卒業式が汚く見えるから卒業生の制服を
交換したのであろう。二人の生徒の気持ちなどまったく
考えたこともなかったのであろう。まあ時代が時代であるが、

絶対に学校の先生にはならないと堅く誓ってそれ以後の
道を選択したと思うが、わずかばかり皮肉な結果となっている
ように思える。

 

科学少年に続く

 

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